「勲章」

昨11月3日、今年の秋の叙勲が授与されました、自衛官出身者の最上級授章者は村木鴻二元航空幕僚長でした。授章したのは「瑞宝重光章」で、これは平成15年に叙勲制度が改正されるまでの「勲二等瑞宝章」に相当します。
従来は「旭日章」と「瑞宝章」が「旭一」、「瑞一」、「旭二」、「瑞二」…と交互に順位が付いていました。
改正で、等級の呼称が廃止され、大、重、中、小・・・と順次区別されるとともに、「旭」と「瑞」は別の系列となりました。
「旭」は顕著な功績のあった者に、「瑞」は長年の功績に対して与えられる章となっています。   「旭」は「良くやったね」、「瑞」は「御苦労さん」というと分かり易いかもしれません。
自衛官出身者は、国会議員になった方などを除くと「瑞」となります。
勲章の最上位は「大勲位」で、天皇、皇族方を除くと最近ではおおむね総理大臣経験者が授章しています。一般人で御存命の大勲位授章者は、中曽根康弘元総理大臣です。
第二次世界大戦以前は、天皇、皇族方は別として、一般人で大勲位は軍人が授章することが多かったものです。総理大臣も軍出身者または現職軍人が多く勤めていますので、大半が軍人であったと言っても過言ではありません。
これは、名誉のために命を捧げる軍人に対する国家の栄誉であったともいえるでしょう。
しかしながら、同じ国防に人生を捧げている自衛官出身者は、自衛官としてトップになった方でも、過去の最高位が「旭二」です。国家のために尽くす自衛官の処遇としては低過ぎるのではないかと思っています。
例えば、在日米軍司令官は一年程度の勤務で「旭大(旭一)」を授与されます。外交辞令的なことがあるにせよ、三十数年を国防にささげ、自衛官の最高位にまで努力を重ねてきた統合幕僚会議議長(現統合幕僚長に相当)が、「旭二」というのはいかがなものでしょう。さらに、在日米陸軍副司令官等は概ね少将ですが「旭二」を授章します。少将は自衛隊でいえば将補です。二階級以上、上の大将に当たる統合幕僚長、陸・海・空各幕僚長と同じということはないのではないでしょうか。
少し話は変わりますが、米軍等の日本で勤務する外国軍人には日本の勲章が大変人気があるそうです。何故なら「EMPERER(皇帝)」名で授与されるのは、エチオピアが体制変更してから、主要国では日本だけになっているからです。ちなみに他の国は、「KING(王)」「PRESIDENT(大統領)」等の名となります。
ところで、皆さんは自衛官の制服に写真のような胸章が付いているのをご存じでしょうか。これは防衛記念章といって、賞状をもらったとか、課程を卒業したとかの際に与えられるものです。

外国の軍人が同じように付けているものは、勲章の略称なので自衛官の付けているものとは全く「似て非なるもの」なのです。(一部外国勤務経験者で、その国から勲章を授与されている場合があります)
勲章の略称は勲章のリボンと同じ柄のものです。
 ちなみに、当防衛システム研究所の松島悠佐代表は現役時、ドイツと米国から勲章を授章し、退官後、瑞宝中授章(瑞三に相当)を授章しています。「写真をホームページにアップさせたいので、正装して勲章をつけたところを写真に撮ってください」と言いましたところ、「ドイツのものと、日本でいただいた勲章は首からかけるもので、両方かけるとカッコ悪いよ」と拒否されました。
防衛記念章は別名「グリコのおまけ」と言われています。
外国勤務の自衛官が、公式パーテイ等に参加した時、同僚外国武官等に「正装時は勲章をつけてこないと駄目だよ」と言われ、恥ずかしい思いをしたという笑えないエピソードもあります。
逆に防衛記念章がない時代に、自衛官が外国武官に「君たちは勲章をもらえて良いね」と話したところ、「何を言っているのだ、これは戦争をしたからもらえたけれど、本来軍人は戦争をしないことを最も誇りとすべきじゃないか、勲章を持たない君たちこそ本当の軍人だ」と言われ、誇らしく思った人がいたそうです。
「我が国が平和だったこと」こそ、自衛官の勲章というべきでしょうか。