訓練と実戦

この話は、松島悠佐代表から聞いた話ですが、旧陸軍で小隊長として支那事変に出兵した先輩の話です。
今でもそうですが、通常はプラスティック製の軽い中帽(ライナー)を付けて作業します。災害派遣時等に皆さんが見ている自衛官は大体がこの姿です。
陸上自衛隊は現在、一体型の鉄帽(88式鉄帽)があり、戦闘訓練などではこれを使用します。しかし重いため通常の作業では使用しません(海・空自衛隊は射撃訓練時等、旧型の66式鉄棒(ヘルメットといいます)と重ねて使用します)。
一体型鉄帽がなかった旧陸軍では、鉄製の重い鉄帽をひもで担いで、いざドンパチが始まるときに、小隊長などの号令「鉄棒!」を受けて、中帽の上にかぶせて身構えます。また、低い姿勢を取らなければ危ないので、そのように訓練時指導します。
ところが、訓練では低い姿勢を取ったり、重い鉄帽を付けたりするのは結構負担が大きいので、兵達は命令が下りるぎりぎりまで身構えません。
ところが、支那事変出兵時、実戦の場面で今からドンパチが始まるという時、小隊長が「鉄棒!」と命令をしようと思い、振り返ったら、兵たち全員が、すでに鉄棒を付け、低い姿勢で身構えていたそうです。やはり危険な場面は心得ているのですね。

次に、薬莢(やっきょう)回収の話ですが、実弾訓練では薬莢を回収し、訓練終了時、射撃した実弾との数合わせをします。これは実弾が紛失して、事件・事故などが起こらないための措置です。
今は小銃に袋がついたものを使用していますが、従来はいちいち拾っていました。米軍との共同訓練で、自衛官が薬莢を拾っているのを見て米軍は「お前ら何をしているのだ」と不思議がっていたそうです。
旧軍でも薬莢は回収していたとのことです。
そこで件の小隊長が支那事変出兵時、部下の兵から「小隊長殿、薬莢は回収するのですか」と質問を受けました。実戦ですので件の小隊長は「バカ、実戦だぞ、薬莢など回収しない」と答えました。
ところが、戦闘が終わってみると自分のズボンのポケットがなんだか重い、中を確かめてみると、それは薬莢だったのです。「訓練とは恐ろしいものだぞ」というのが教訓・戦訓でした。