100%の安全?

7月に入って、関西電力大飯原子力発電所3号機が起動した、政府の電力政策が修正されながらも、何とか継続していくための最低限の再稼働と考える。
一方、防衛問題では、海兵隊のMV-22「オスプレー」の配備が論議を呼んでいる。
共通することは、周辺住民および、国民が100%の安全を求めていることである。
はたして世の中に100%の安全というものがあるのだろうか。
何年か前、BSE問題があった時、我が国は、輸入牛について全頭検査を行わなければ輸入しないということにし、大量の既輸入牛肉の廃棄と、検査体制の整備を行った。国民はやっと納得したのである。
しかし、牛肉とBES発症の因果関係、発症に至るまでの年月(約20年と言われている)などから、ある学者が推計すると牛肉を食べてBSEが発症・死亡する確率は、50億分の1とのことである。世界人口は約60億と言われているので、毎日なくなっている方が何人なのかは定かでないにしても、恐れる確率ではないと思う。
オーストラリア産の輸入牛肉は1頭買いのため全頭検査が可能だったが、米国産は部位ごとの輸入のため、全頭検査ができなく、長い期間輸入禁止となった。
しかし、この間2億人以上の米国人は牛肉を食して、何もなかったのである。
原子力発電、オスプレーに関して共通している「100%の安全」を求める声は、明らかに誤った方向へ人々を導くと思う。何事にもリスクはある。リスクがあるから、それに対する安全策を講じ、不時の事故などにも対応策を検討し、さらに訓練などを行う必要があるのである。原発周辺で「避難訓練」を実施しようとしても、100%安全と説明している手前、訓練を実施できない。
オスプレーの配備は、海兵隊の作戦能力を飛躍的に向上させるものである。ヘリコプターの特性と、飛行機の特性を両立させた画期的かつ最新鋭の航空機である。初期段階での故障や事故は「当然のリスク」であり、この教訓を生かしながら、いかに安全な機体に仕上げるか、いかに安全に配慮しつつ作戦を組み立てるかが、検討されて前進するのである。
新しい技術に「リスク」は付き物である。オスプレーは安全性(10万時間当たりの事故率)という観点からすると、既存の航空機の中では低い確率である。
オスプレーなどの航空機に関して言えば「鉄の塊」が空を飛ぶのである。100%の安全を求める方が無理ではないだろうか。
原子力発電所についても、100%の安全を求めた結果、危機管理対策などが遅れた、または不十分であったと思う。(論文項「原子力発電所の危機管理について考える」参照)
また、微々たる不具合に関しても、公表しなかったということで、マスコミが大きく報道する。それに、元々原子力発電に反対の人々が大きく反応し反対運動に利用する。
微々たる不具合は微々たる不具合なのである。それが、大きな不具合に発展する可能性があるかどうかなどについては設計段階で慎重に検討が行われないといけないが、何でもかんでも「公表」すれば良いものではない。作業員が風邪をひいても公表するのだろうか。どこかに基準というものがあるのである。
日本人は、先進技術にもっと大胆に挑戦し取り入れるべきである。
100%の安全など存在しない。(島本順光)