「らっぱ」

自衛隊の部隊などでは「起床らっぱ」で行動が始まります。「らっぱ」は自衛隊員の日常生活にかかわる諸動作を知らせるだけではなく、陸上自衛隊では他の通信機材などが機能しない場合、非常時の連絡手段として重要なものとして位置付けられています。海上自衛隊の「手旗」「モールス信号」「伝声管」(最新式の護衛艦にも付いている)などと同様と考えられます。
通常、部隊等で耳にするのは「起床」「食事」「気をつけ」「国歌」「課業始め」「課業終わり」「点呼」「消灯」などです。
これらを文字で表そうとしても、みんな「パパパパ・・・」となってしまい、何のことか分かりません。陸上自衛隊のホームページでバナーの「ファン・エンタメ」から、サウンドを引いてもらえば実際の音が聞けるので是非聞いていただきたいと思います。
又、さらに詳しく知りたければ、Yahoo、Googleなどで「自衛隊らっぱ」で引くと,詳しいサウンドが聴けます。
ただし、一般の隊員は上記のものの他は、ほとんど聞いたことがないでしょう。
 国歌を始め、各部隊のサウンド、諸動作の号令、警報、命令・指令等々かなりのものが聞けます。「乗車」「下車」「早足行進」「駆け足行進」「射撃」「突撃」など色々です。
「非常呼集(警報)」は「とさかにきっきっき-」と覚えました。又「火災呼集(警報)」は「私物もって逃げろー」でした。サウンドで聞いてみるとなるほどと思います。
ほとんどの「らっぱ」は二度繰り返されますが「気をつけ」「休め」などは一度です。
通常、隊員は整列して国旗掲揚を行います。室内にいる場合は、その部隊の国旗掲揚台の方角に向かい、「気をつけ」の姿勢で国歌を聴く間「気をつけ」の姿勢を保ちます。
一般の方が部隊訪問などをしていて、懇談中などに自衛官がいきなり立ち上がり、気をつけの姿勢をとって、客を驚かす場面がしばしばあります。隊員も、その間説明も出来ないので、ちょっとおもしろい光景となります。
陸上自衛隊、海上自衛隊は「らっぱ」の国歌です。
航空自衛隊は通常のメロデイの国歌「君が代」です。何故でしょうか、分かりません。
陸上自衛官に聞かれましたが、非常時の連絡手段として、航空自衛隊はどのようなものがあるのかというと、無いのですね。私の勉強不足かもしれませんが、少なくとも教育ではありませんでした。航空機の騒音の中で、パイロットと整備員が手信号で連絡するのはあります。一応、有線・無線で音声連絡回路も構成されています。特殊な職域内での手信号などはありますが、共通のものは承知していません。
 「らっぱ」は放送装置、スピーカーで流されます。しかし本来は「らっぱ手」が指揮官の命令により、ならすものです。「らっぱ手」は伝令と同じように指揮官のそばにいて、必要に応じて「らっぱ」を吹くのですが、若手の曹士が担当します。ある期間、教育を受けて「らっぱ手」となるのですが、個々人の技量の差もあり、普段の練習が欠かせません。
下手なものは部隊などで練習中、「うるさい」「へたくそ」などの非難を浴びながらも上達に向けて涙ぐましい努力をするのです。防衛省内でも「らっぱ手」何人かが行進しながら「らっぱ」を吹いているのを時々見かけます。調子外れの者もいますが、誰が吹いているのか分かりませんので、都合の良い練習方法ですね。
 「らっぱ」は陸上自衛隊では、部隊行動の最終手段として「手信号」(特に無音で行動する時使用)と共に重要なものです。「らっぱ」は信号伝達の他、部隊士気の高揚もはかることになるので、部隊対抗の大会などもあります。
余談ですが、整腸薬である「正露丸」のコマーシャル・メロデイは旧海軍の「食事らっぱ」だそうです。
「正露丸」は「征露丸」(ロシアを制する)という意味ですので、勇ましいと共に、食事においての注意も呼びかけているのでしょうか。おなかが痛くなったら「正露丸」と言うことでしょうね。(島本順光)