「ミサイルの話」(その1)

皆さんは「ミサイル」と言うとどのようなものを想像しますか。
このホームページにアクセスされる方々は、概ね承知されていると思いますが、ちょっと整理してみたいと思います。
一般の国民は「ミサイル」と言えば北朝鮮が発射実験を行ったりする「弾道弾」を想像されるのではないでしょうか。
「ミサイル」を日本語で言うと「誘導弾」ですが、非常に多種多様なものがあります。
「ミサイル」は「誘導部」「弾頭部」「推進部」からなっており、軍事目的に使用されるものを言います。それぞれの目的により各部の内容が大きく異なります。
「ミサイル」の分類は、まず、発射位置(プラットホーム)と目標位置とによって、地対地、地対空、空対地、空対空に大きく分けるのが一般的です。この場合「地」には潜水艦など水中から発射されるものも含まれます。
地対地のミサイルをSSM(Surface to Surface Missile)と呼びます。これの一番大きいものが、大陸間弾道弾ICBM(Inter Continental Ballistic Missile)で、射程は1万キロメートルを超えるものもあり、弾頭威力は、大きなものでは核弾頭で20~50メガトン(TNT火薬換算で2千万トン分以上の爆発量:広島に投下された核爆弾は10キロトン、TNT換算で1万トン)という途方もないものです。50メガトンと言うのは、第2次世界大戦で使用された全爆薬量の10倍というものです。ミサイル1発の破壊力がこれですので、一斉に打ち合えば地球の破滅となります。
このICBMは戦略(核)ミサイルという分類に入ります。同じ戦略ミサイルに分類されるものに、潜航した潜水艦から空気圧で発射され、水面に出たところで推進部に点火し目標に向かうSLBM(Submarine Launched Ballistic Missile)があります、射程は7千キロ程度以下です。弾頭威力は概ねICBMと同等です。これもSSMに分類されます。これらが我が国に最も大きな脅威となるものです。北朝鮮のノドンミサイルは核弾頭については現時点では装着できないようですが、約200発が北海道の一部を除いて本土全体を射程に収めています。ロシア、中国は悠々わが国全土を核攻撃できる戦略核ミサイルを装備しています。
SSMと言っても、射程が50~100キロ程度のものもあります。攻撃対象により誘導装置に違いがありますが、艦船を目標とするもの、陸上部隊を目標とするもの等です。
北朝鮮が沿岸部で時々発射する、この種SSMは到底我が国まで届きません。新聞等の報道は、縮尺された地図上で見るので、いかにも脅威であるかの印象を与えますが、実際は全く脅威とはなりません。
次に地対空ミサイルSAM(Surface to Air Missile)についてですが、皆さんもよく「ミサイル防衛システム」「SM-3」「パトリオットPAC-3」等の言葉を聞かれていると思います。これらシステムで実際に破壊力を発揮するのが、地対空ミサイルです。
ミサイル防衛システムは先ほど述べたICBMからの攻撃を防ぐためのもので、航空機や巡航ミサイルを迎撃するためのSAMに比べて、精度が数段高くなくてはならず、現状での最高技術を駆使して製作、運用されています。
SAMにも弾道ミサイル防衛用のものから、人が肩に担いで低空で侵入してくる航空機等を打ち落とすものまで多種多様なものがあります。
また、上に述べた、巡航ミサイルは弾道ミサイルと違い、比較的低速で、地上すれすれに飛行し、慣性誘導、GPSや地図認識誘導装置、レーダー誘導装置等あるいはこれらの複合したもので目標を破壊するものです。非常に精度が高く、安価でもあるので、用途によって色々使われています。イラン戦争などでも多用されました。
巡航ミサイルの代表的なものに「ハープーン」があります。射程が100キロ程度の戦術ミサイルに分類され、海上自衛隊の護衛艦にも搭載されています。昔の戦闘艦でいう「大砲」の代わりです。
巡航ミサイルの長射程のものには「トマホーク」があり、核弾頭装備可能です。射程も2千5百キロ程度飛ぶものがあります。これは戦略ミサイルに分類され、ICBMより軽量小型、安価で運用に柔軟性(核、非核弾頭選択)があるため、SLBMの代替が進んでいます。これをSLCM(Submarine Lunched Cruise Missile)と言います。
「ハープーン」「トマホーク」等は発射位置により、SSM、ASM(Air to Surface Missile)のどちらかに分類が分かれます。
我が国も、「トマホーク」級のミサイルを開発し、弾道ミサイル発射の策源地攻撃を可能とするべきだと思います。
また、将来的には有事に米国から核弾頭を提供してもらえる「核シェアリング」という選択枝を持つことにより、戦略核に対する抑止力を持つべきだと考えます。現在、この「核シェアリング」戦略を採用している国にはドイツ、オランダ、イタリア、ベルギーがあります。