「自衛官の社会的地位」
私が自衛官の現職だったころは、恋愛結婚と見合い結婚が、概ね半々だったような気がします。現代では、ほとんど見合いというシステムが少なくなり、「年頃だからそろそろ身を固めた方が…」というような言葉もあまり聞かれなくなりました。
一方で「合コン」なる、集団見合いともいえるシステムがごく一般的になり、また盛んに行われています。
職業的な仕分けが多いのですが、その中に「自衛官」というのが堂々と存在していて。「医者」「弁護士」等高学歴、高収入の職業とともに「安定性」を評価する、「公務員」の中でかなり人気の職業となっています。
事実、私にも「合コン」に現職自衛官の参加を調整してほしいという申し出が数回ありました。自衛隊は階級社会ですが、以外に幹部自衛官に人気が集まるわけではなく、曹士隊員もかなりの人気です。その人気を想像するに、若い隊員が多く、訓練で引き締まった肉体、元気溌剌・きびきびとした動作、礼儀正しい所作、制服がカッコいい等々ではないでしょうか。
意外なのは、自衛官で高収入というのは「パイロット」、特に航空自衛隊のジェット戦闘機パイロットですが、カッコ良い割には「安定性」を求める女性には敬遠されがちです。
ここが、女心、家庭を持とうとしている女性の現実的なところでしょう。
自衛官を目指す男性では、ダントツ「ジェット戦闘機パイロット」が多いのと対照的です。
ちょっと、表に出ない隠れた人気としては、自衛官は二男、三男が多く、お嫁さん側の両親が手元に自分の娘を置いておけるということがあると思います。これが、特に移動が激しい(1.5年から、2年程度で配置転換が普通)幹部自衛官より、地域に定着性のある曹士隊員に人気がある理由ではないかと思っています。
私が最も長く勤務した、(と言っても、3回にわたり通算4年半ですが)岐阜基地でも地元で結婚し、岐阜に定着している隊員がたくさんいます。OB会なども、実質このような曹士隊員たちが運営してくれていて、東京などから、イベントがあるたびに参加し、旧交を温めています。
自衛官の社会的地位は、1991年のペルシャ湾への海上自衛隊の派遣、1992年のカンボジアへの派遣に始まる、国際貢献。1995年の「阪神淡路大震災」、「新潟中越地震」を始め、2011年の「東日本大震災」に至る自衛隊の災害派遣での活躍等々が、国民に理解され、身近な存在として認められてきたものと考えています。
これらのことは、誇らしいことであり、嬉しいことであるのですが、自衛隊の本義は「国防」にあり、この点での国民の理解と評価はまだ十分ではないと思っています。
自衛官が、世の女性たちに「公務員」としての安定性、健康などではなく、頼もしい「防人」として認められる日を待ち望むとともに、一方でそのような日が来ない方が良いのではないかという気もする次第です。(島本順光)