「軍歌・隊歌」
前回、「訓練パレード」の話で陸・海・空各自衛隊の行進曲が違う話をしました。
今回は「軍歌」というか、自衛隊では「隊歌」についての話です。
陸上自衛隊の隊歌は「栄光の旗の下に」「この国は」だそうです。海上自衛隊隊歌は「海をゆく」だそうです。陸上自衛隊では、各方面隊の歌、連隊の歌などが数多く歌われています。元航空自衛官である私は、これらを全く聞いたことがありません。
これは私の認識ですが、陸・海自衛隊では、旧帝国陸軍、帝国海軍の「軍歌」を今でも歌っていると思います。少なくともカラオケ屋さんでは「軍歌」を歌っていると思っています。「戦友」、「歩兵の本領」、「ラバウル航空隊」「月月火水木金金」等々、心を打つものがたくさんあります。私も一応これらの名歌は歌えます。
数ある軍歌で、陸・海・空各自衛隊で共通して歌われるのが「同期の桜」です。集会や、宴会の最後に、参加者全員が肩を組んで合唱します。ただし「同じ…」の「・・・」が「同じ航空隊」「同じ兵学校」などと変えて歌われます。
海上自衛隊の「海をゆく」は当初「男と生れて…」で始まる歌でしたが、女性自衛官が多く採用されるようになって、全然違う歌詞になっています。最後だけ同じですが。
ちなみに防衛システム研究所の海上自衛官OBは現在の「海をゆく」の歌詞は知りませんでした。
航空自衛隊は大日本帝国空軍がなかったので旧軍からの歌がありません。
航空自衛隊隊歌は「青空遠く」です。多分、陸・海の自衛官は聞いたこともないでしょう。
しかしながら、航空自衛隊の「浜松航空隊の歌」は名歌だと思っています。
「黒潮渦巻く…」で始まりますが、パイロット、整備員、レーダー操作員、その他の職種の心を順次一番から四番までで歌ったもので、良い歌だと思っています。興味のある方はぜひネット等で聞いてみてください。上に書いたように、航空自衛隊の集会や宴会では「同期の桜」とともに「浜松航空隊の歌」がしょっちゅう歌われます。
以前、「つばさ会」(航空自衛官のOB会)でのことです。ある先輩の横で「浜松航空隊の歌」を歌っていました。そこで、はたと気づいたのですが、二番に「明日の飛行は音速突破…」という歌詞があります。しかし、航空自衛隊発足当時は主力戦闘機がF-86Fだったので、音速は突破できないのです。みんな何十年も二番の歌詞を歌っているのですが、だれも疑念を持っていません。件の先輩にそれを言うと「そうだよ、おかしいな」と言っていました。普段はかなり理屈っぽい先輩ですが、相当飲んでいましたのでそれっきりになりました。今年の「つばさ会」でもみんなで肩を組み「浜松航空隊の歌」を大きな声で合唱しました。これで良いのですね、心が通じていれば。(島本順光)