オスプレイの試験飛行
9月21日オスプレイの試験飛行が開始された。米軍は安全宣言を出して
10月の本格的な運用に向けて計画を進めているようだが問題の解決はまだ先である。
原因は、総理大臣と防衛大臣の姿勢が曖昧なためである。
オスプレイ配備については「戦闘力の強化」と「安全性」の二つの要因が必要なことを7月にも小論文に書いた。
県知事や市長など地方自治体の首長が、「安全性」を考え、「戦闘力の強化」については防衛大臣が訴え、その両面を考えて総理が決断を下さなければならない。それが日本の政府・行政機構の役割分担になっている。
沖縄県知事が「安全が保障できないものを受け入れるわけには行かない」と言っているのは当然だが、仲井間知事は闇雲に何でも反対といっているわけではない。国の安全保障、特に沖縄の防衛については一見識を持っている人である。
問題なのは森本防衛大臣の方だろう。
防衛大臣は最初から安全性のことだけに言及しており、「オスプレイは国を守るために必要な装備だ」という信念を持って国民を説得する努力を怠ってきた。
オスプレイは、20年来米海兵隊が待ち望んできた悲願とも言える兵器である。
海兵隊が戦力投入される地域は、ほとんどが狭隘な地積しかなく、ヘリのような垂直離発着機が必要であり、しかも迅速広域に戦力投入を図るためにはペイロードを大きくして航続距離も伸ばしたい。この相容れない要求性能を何とか満たして作り上げたのがこのオスプレイである。海兵隊の思い入れは尋常なものではない。
垂直に離発着して水平に飛行するという機能を発揮するには、構造も複雑で操縦も難しくなるのは当たり前だろう。
安全宣言では、過去の事故原因は機体の問題ではないとなっているが、事故原因には製造上の不具合と操作上のミスが重なる場合が多く決定的なものは分からないだろう。
防衛大臣は、事故からの安全を守る事だけを考えているようだが、防衛大臣のするべきことは「オスプレイ装備は海兵隊の戦力強化のためであり、ひいてはわが国に対する抑止力の強化になり、沖縄はじめわが国の防衛に寄与するものなのだ」として、安全第一と主張する知事を説得する努力が必要である。
そして野田総理は、「沖縄での運用に当たっては安全性に万全を期するが、万が一事故が発生したような場合には。国が一切の責任を取る。」と明言すべきである。それが総理として必要な決断である。その程度の決意がなければ国の防衛など出来ないだろう。事故が起きた後のことまで地方自治体に心配をかけてはいけない。
仲井間知事もそのことを待っているのだろう。
野田総理と森本防衛大臣の姿勢を見ていると、オスプレイ配備の解決はまだ先になるのかもしれない。あるいは普天間の問題と同様に解決せずに逃げてしまうのだろうか。〈松島悠佐〉