ハイブリッド戦争・未来型の戦争
「ハイブリッド戦争・未来型の戦争」
ロシアとウクライナの紛争が原因でハイブリッド戦争という言葉が飛びだした。
ハイブリッドとは元々いろいろなものを混ぜ合わせるという意味のようだが、ウクライナ紛争ではロシア軍が直接介入した疑惑もあるが、ロシア軍は武器だけを提供しロシア系住民による非軍事組織が暗躍した形跡もある。確たる証拠がなくてよくわからない。プーチンはKGB出身らしく情報戦に長けているのか、いろいろな手を使って米欧の軍事的圧迫を喰い止めようとしている。このような戦い方を英国の情報機関がハイブリッド・ウオーフェアー(Hybrid-warfare)と呼んだ。
アメリカの大統領選挙にロシアがサイバー攻撃を利用して介入したとの疑惑が持たれているが、これも一つの例だろう。アメリカはオバマ政権の末期にロシアに制裁を課したが、トランプがこれを反故にした。
ハイブリッド戦争は軍隊による軍事力の行使だけではなく,あらゆる手段や手法を取り混ぜて政治目的を達成する未来型の戦争である。
軍隊による破壊力(多くの場合硝煙臭のする火薬による破壊力)には批判が強まり大国はこれを避ける傾向にあり、代わりに軍隊以外の組織が相手の政治機能を自分の意図どおりにコントロールし、軍事組織自体を手なづけたり崩壊させる手を使ってくる。
今、火薬による破壊を続けて町を廃墟にしているのはイスラミック・ステイトなどテロ組織の仕業が多く、平和に慣れた者から見れば目を背けたくなるような様子である。
だがハイブリッド戦争になると、町を廃墟にするような様子は無いかもしれないが、誰が何をやったのかわからない間に相手の意図を屈服させて、自分の意図を通す事が起きるのかもしれない。
ハイブリッド戦争の手段としては、情報戦(スパイ活動による偽情報と不安定化)や、サイバー戦(金融・産業・電力・市民生活など民間の広範な分野に入り込んで国家の機能を麻痺させる)の他、宇宙戦
やテロ活動など広範にわたる。これが主流になると陰湿な戦いになる可能性もある。
ロシアのプーチンは2017年現在アメリカだけではなくドイツもターゲットにしているようだ。ドイツは東西統一後力をつけて目下ヨーロッパの主軸になっているが、これを弱めてロシアへの制裁の圧力を減殺するのが目的だろう。メルケル首相の政治的手腕は優れているが、やがて陰湿な対決が始まるのではなかろうか。ドイツとロシアの対立は第2次世界大戦前夜の独ソ戦を思い出させるがそのようにならないことを願っている。(松島悠佐、2017.8.2)