中国海軍艦艇による火器管制用レーダー照射

2月5日、1月19日と30日に我が国の海上自衛隊艦艇と、搭載ヘリコプターに対する中国海軍艦艇による火器管制用レーダー照射について、大々的にニュースとして取り上げられた。
艦艇は通常捜索レーダーにより周辺を監視している。これに比べ射撃する場合は目標をピンポイントで補足する必要がある。倍率の高い双眼鏡は広い範囲から小さな目標を発見するには適していないので、全体から見当を付けて範囲を絞って探すということは一般の方でも理解できることであろう。
艦艇も捜索レーダーで目標を探知し、そのデータを火器管制用レーダーに送り、火器管制用レーダーは、より正確なデータを兵器管制システムにインプットする。
ただし、この動作は通常交戦を前提にしているケースにおいてなされる。訓練を除き、通常は公海上で、他国の艦艇に照射するのは正気の沙汰ではない。
全般情勢にもよるが、交戦規定(ROE: Rules of Engagement)で火器管制用レーダー照射を受けた場合、その時点で反撃しても良いとされている場合も多くあると思われる。
我が国は「専守防衛」を掲げているので、相手方が実際に兵器を発射または発砲してからしか反撃しない。そのことを分かって中国艦艇が火器管制用レーダー照射を行ったのかどうかが問題になっているが、対ロシア海軍、対米国海軍の艦艇に対しては絶対にこのような行為は取らないであろう。
中国政府が認識していたかどうかは別にして、現場中国海軍は上記のことを十分理解していたと思われる。
防衛大臣が、緊急記者会見を行ったが、記者の質問に直接答えず、メモを繰り返し読むだけだったのが印象に残る。また、事案のあったのが先月19日と30日だったことも、少し遅い発表のようである。
しかしながら、このような電波情報については各国とも極秘事項であり、中国海軍も、情報戦の一環として実施した疑いもある。これに敏感に反応すれば、我が国の海上戦力の実態をさらけ出すことになり、これは避けなければならないことである。
記者の質問には一般の事案と同じセンスのものがあり、軍事上の常識を理解していないのも甚だしいことである。
このような軍事上の常識をしっかりと理解しているかどうかは、いわゆる軍事専門家もそのコメント内容で判断できる。さすがに、元自衛官の場合は、言って良いことと、言ってはならないことの仕分けがはっきりしていたように思われる。 (島本順光)