退職自衛官とGM生活

今年は平成25年です。防衛大学校の卒業年次、すなわち期別で昭和32年卒業の第1期生から、今年、3月17日卒業の第57期生までが現職自衛官として活躍し、やがて定年を迎えて退職していきます。
平成の年次と、防衛大学校の卒業年次にはちょっとした関わりがあります。
平成の年次に、退職の中心を迎えるのが、防衛大学校の同期別卒業者なのです。
もちろん自衛官は、階級によって定年年齢が違うので、それぞれの退職時期はまちまちです。しかしその中心は概ね防衛大学校の卒業期別と平成の年次が合致しています。
今年は平成25年ですので、第25期生(相当の一般大学卒業者も含む)の多くが定年を迎えることになります。
自衛官は、退職すると、再就職するのが通常です。年齢的にも55歳程度と若いし、経済的にもまだまだ、収入を必要とするのでどこかの企業に再就職します。
以前は関連の防衛産業などにも再就職できました。その道のプロであったものが、関連企業に再就職することは、国家にとっても良いことであると思います。しかし、社会一般の考えでは、いわゆる「天下り」「官民癒着」という事になってしまいます。
実際は財務省を筆頭とする官僚の「天下り」とはほど遠いものです。最高位の「将」でさえ、嘱託である顧問にしかならないケースがほとんどです。○○公団総裁、理事、○○独立行政法人理事長、理事等々、高収入で社会的地位も高い「天下り」とは全く違うのです。
一方で自衛官自身は、武人である自覚を持つものが多く、「武士は食わねど高楊枝」的考えを持つ者も多いのも事実です。
以前私が使えていた自衛隊OBの参議院議員は,後輩が退職の挨拶に来ると「まだ若いのだから、少しでも国家のお役に立つよう働け」と檄を飛ばしていました。
自衛官は特殊な職業です。それぞれの職場での能力は一般社会とは隔絶している能力です。これを防衛関連産業に反映、寄与させることは非常に有効なことと考えています。しかしながら、先に述べたごとく、大きな制約を受けているのが現状なのです。
先日、松島当研究所代表と台湾からの駐在武官の送別会として、一緒に食事をする機会がありました。色々話をしていると、その駐在武官は本国へ帰るとすぐ退官するとのことでした。しかし、退官後は大佐である彼は生涯、現在の給料の80%を保障されるそうです。将軍は100%保障だそうです。国家として軍人に対する処遇の差を感じた次第です。
退職自衛官は62歳程度で再就職先も定年となるケースが通常です。再々就職で頑張る者もいますが、概ね年金生活になります。最近の退職者は分かりませんが、私たち世代では、GM生活に入るケースが多いのです。GMとは、通常「Guided Missile」を意味しますが、GM生活となると、ゴルフ(G)・麻雀(M)生活となります。かくいう私も、誘われるままに付き合っていると、正にGM生活になってしまいます。
それでも、著作や講演等を通じ、少しでも国防に対する認識を正しいものにし、国家への貢献をしていきたいと思っています。
そのためには健康でなければなりません。ボケてもいられません。Gによって体力を、Mによって知力を健全に保ちながら、生涯国家に貢献したいと思っています。
そういう考えの仲間が多いのが自衛官なのです。(島本順光)