日本と中国の交戦規定・判断基準の違い
中国艦艇による射撃用レーダー照射が問題になっている。
現役の防衛大臣まで狩り出されて、種々のコメントが語られているが、根底には日本と中国の交戦規定と領土に対する判断基準の違いがあることを理解しておかないと判断を誤ることになる。
射撃用レーダー照射は政府が命じたことなのか、現場の判断によるものか、と言うような問題の捉え方も愚問である。
レーダー照射をするのかしないのかまで、中央政府が命じるはずもないだろう。中央政府が命じているのは「尖閣諸島を含む東シナ海は中国の領海であり、それを脅かすものには厳正に対処せよ」という指令だろう。
これを受けた軍中央司令部や艦隊司令部は、それぞれの任務に照らしてそれを具現化して対応要領を命じていると思われ、最終的に警戒に当たる個々の艦艇が、さらに具体的な措置を命じるのが普通の軍隊のやり方である。中国艦艇も多分そうしているのだろう。
現場の艦艇にして見れば、相手が敵対行動を採るような気配があれば、ただちに撃破する体制を整えるのが当然であり、そのための措置として射撃用レーダーを照射して攻撃体制を整えていたと思われる。
射撃用レーダー照射は、言わば「領海を守れ」と命じられた艦艇が当然に行う行動と理解しておくことが肝要である。
わが国にはそのような交戦規定はない。海上保安庁が警戒に当たっているが、漁業の不法操業や海上交通の安全確保が主目的であり、武力によって領海を守るというような任務もないし、従って交戦規定もない。
自衛隊はさらに防衛出動が下令されるまで領海警備を命じられることもない。もしこのような平時に中国艦艇から攻撃を受けたら、自衛艦はどう対応するのか。自衛隊では艦艇などを守るために「武器等防護のための武器使用」ができることにはなっているが、これは正当防衛・緊急避難以外には相手を傷つけてはならないというような制限が加えられていて、とても戦闘の用には供しない。
テレビの解説者の中には、中国の挑発に乗らずに我慢するのが得策などと言う人がいるが、それを続けてきた結果が今のような不安全な状態を作ってしまった。
日本が何もしないことがわかれば中国はさらに圧力のラダーを上げてくる。
射撃用レーダー照射が問題ではなくて、中国政府が尖閣諸島を自分の領土だと主張し軍に防衛の任務を与えている、そのことが問題なのであり、それを改めさせることが肝要である。
そのためには、わが国が領土として認知できるような施設を作るなり、人を常駐させるなりして、実効支配を確実にすることが大事である。
日本と中国の領土に対する交戦規定や判断基準の違いをよく理解して対応を誤らないようにしなければならない。(松島悠佐)