「普・特・機(ふとっき) 解説編 その15

陸上自衛隊は歩兵を運用する普通科、昔で言う「兵科」と大砲・ミサイル等を運用する特科および、戦車を運用する「機甲科」の三職種を「普・特・機」と呼んでいます。
陸上自衛隊のトップ、陸上幕僚長はほとんどの場合、この三職種出身者が占めています。
先年亡くなった永野茂門元参議院議員は数少ない通信出身の陸上幕僚長でした。
例外中の例外だったそうです。
一方海上自衛隊は、水上艦、潜水艦、航空機等々を持ち、それぞれの運用・指揮を司るものがトップに立ちます。水上艦には掃海艇なども含まれます。
ただし、いわゆるオペレーターといわれる、運用者しかトップになれないのが実情です。
航空自衛隊はどうかというと、パイロット(戦闘機、輸送機共)、整備、パトリオット運用・整備、レーダー統制官(GCIと言っています)技術幹部等々職種によってトップになる、なれないと言うことはありません。現に、現在の片岡晴彦航空幕僚長は技術幹部の出身です。過去にも技術幹部出身の航空幕僚長がおられました。
将軍を意味するGENERALは文字通りGeneral(全体、一般等)を表すもので、全ての職種を超越して運用・指揮すべきものであると思います。
私は過去も現在も大変優秀な普・特・機出身以外の陸上自衛官を知っています。これからの新しい時代に、職種にこだわりトップになれないと言うことは優秀な人材を逸してしまう結果になるのではないでしょうか。
旧陸軍は技術将校を兵科将校と同列に扱い、陸軍大学の選抜などを行ったようです。しかし、技術将校が兵科中心の職務や学科で優秀な成績を収めることは通常困難です。その伝統は現在の陸上自衛隊にも受け継がれているようで、技術幹部は概ねCGS(指揮幕僚課程:旧陸軍大学に相当)には進まず、技術職の専門課程に進みます。
航空自衛隊では、CS(指揮幕僚課程)に研究開発職種の科目があり、毎年数人の技術幹部が課程に入っています。
旧海軍は技術将校を別ラインで管理し、経理、機関職種と同様、指揮権は与えませんでした。しかし縦割りで海軍中将まで昇進でき、技術に関することに専念させました。
戦後の発展に寄与した、自動車用エンジン技術、造船技術などは海軍の技術レベルの高さを象徴しています。海上自衛隊でも技術幹部がCSに研究開発の科目で受験できるようになっています。
これからの新しい時代に対応する軍を運用・指揮するものは、職種にこだわるべきではないと思います。例えば、サイバ-攻撃などに対応する職種も誕生するでしょうし、情報職域なども重要度を増してきます。昔からある経理・会計職、調達・補給職などの職種も冷静な戦略を構築する上で欠かせない存在です。
新しい時代の新しい軍組織を目指して、職種間の垣根を取り払った人事がなされれば良いと思います。