「伝統、旗と色」
まえに、自衛隊出身のT参議院議員が「陸上と、航空は自衛隊だけど、海上は自衛隊ではなく、海軍だよ」と言っておられたことを紹介しました。
しかし陸上自衛隊も、大日本帝国陸軍の伝統を数多く受け継いでいます。
その一つが「旗」についての思い入れです。
連隊旗は部隊の死守すべき象徴であって、部隊の命でもあります。麻雀で、一万点棒を取られることを「連隊旗を取られた」と言いますが、大事なものの例えとして、言われているのだと思います。
帝国陸軍は、軍旗を非常に大事にし、特に連隊旗は周辺の房の部分だけが残り、中の旭日旗はなにも無い物でも、連隊長と共にありました。行軍などでも、房だけの旗竿を持った旗手が堂々の行進をしている写真を見かけます。
この伝統は、現在の陸上自衛隊にも残っており、隊旗はそれぞれの部隊の象徴として、非常に重要視されています。
中隊以上には、それぞれに応じた形状、色、文様のものが設定され、その旗の下に何事であれ結集し、力を発揮するのです。
海上自衛隊は、旗に対しては「古くなったり、破損すれば取り替える」ということになっており、取り替えられた旗は切断して破棄するとのことです。
艦上旗は潮風にはためきますので、損傷が早く、三分の一が破損すると破棄するそうです。
このように、旗に対する思い入れが違いますので、ちょっとした齟齬がでたことがあります。
カンボジアへのPKO派遣以来、陸上自衛隊は数々の海外派遣を行ってきました。その際「隊旗授与式」というものを実施し、防衛大臣あるいはしかるべき指揮官から「隊旗」を授与し、任務を付与されて活動に入ったわけです。
ところが、海賊対策のジプチ派遣は海上自衛隊が派遣部隊の主体で、陸上自衛隊はその警備任務で少数が派遣されるということでした。
しかしながら、陸上自衛隊は派遣される以上「隊旗授与式」があるものと思っていましたが、海上自衛隊ではその意識がありません。結果として「隊旗授与式」はなかったそうです。
考えてみれば、海上自衛隊は常に国土から離れて活動していますので、いちいち式典を行わなくても任務に入ることに抵抗はないのでしょう。
次に、「色」についてですが、陸上自衛隊では15職種にそれぞれ「色」があります。普通科(歩兵)は赤、機甲科(戦車)は橙、特科(砲兵、ミサイル部隊)は黄色などです。それぞれの部隊の旗印はもちろん、個人の制服の上腕部に着ける部隊章の上部には、それぞれ部隊の職種を表す色が付いています。ただし、職種に関係なく司令部要員は紺色だとのことです。
戦闘服のスカーフも「色」で識別できます。
今年は観閲式ですので、それぞれのスカーフの色と職種を確認してみてはいかがでしょう。
しかしながら航空自衛隊出身の者からすると、兵科はともかく「輸送職」「通信職」などは、あまり明らかにしない方が良いのではないかと思いますが、伝統の無い者のやっかみでしょうか。
この「色」は帝国陸軍から概ね同じのようです。ただし、今の15職種に入らない、騎兵、憲兵などの兵科職種はありません。工兵、輜重兵などは、それぞれ施設科、輸送科等に名称が変わっています。
職種とは別に、「空挺」は白だそうです、大空に花開く落下傘をイメージしたものでしょうか。重兵輜重兵
それぞれ「旗」と「色」のもとで、誇りを持って任務に邁進しているのです。