世界に誇る我が国の「飛行艇US-2」
自衛隊は、民間の皆様からすれば特殊な装備品を多数持っています。それも、これも、いざ一朝事在るときに、皆様の安全を守るための装備品です。
中には世界でも有数の「国産優れもの」もあります。そのNO1と言ってもいいものに「US-2」という飛行艇があります。
飛行艇というのは、漁船などが遭難して救助を求めている時、近くの水面に着水(着陸といわない)して、救助するために船と飛行機を合わせたようなものです。
我が国は四周を海に囲まれているため、第2次大戦当時「二式大艇」というものを装備し「世界最高性能」と言われていました。
飛行艇は旧川西航空機が得意とする分野で、今はその流れをくむ新明和工業がその技術を継承して作っています。
最新型の飛行艇が「US-2」です。
飛行艇は海上自衛隊の装備で、はじめは対潜哨戒機「PS-1」として開発されました。しかし、その後の技術革新もあって着水してソナー(潜水艦の音を感知し、位置を確かめる器材)を下ろさなくても潜水艦を探知できるようになりました。
そこで、せっかく開発した技術を「救難機」として使おうという構想がなされ、US-1が開発されました。非常に特殊な、難しい技術ですので、US-1からUS-1A、US-1A改と徐々に進歩して装備品としての「US-2」の登場となったのです。
波の高さが3メートルもある海面にも着水できるだけでなく、陸上の滑走路にも着陸できるものです。遠方の荒海で遭難した人を救助して、陸上の飛行場へ搬送し、少しでも早く病院に運ぶという、離れ業ができるのです。
「ヘリコプターも出来るじゃないか」という方も居られるかと思いますが、ヘリコプターはそんなに遠くへ行けません(約650Km)。
また、速度もせいぜい250K/Hぐらいしか出ません。これに比べて、US-2は、約2,000キロの行動半径で、速度は500K/Hぐらい出ます。太平洋の遠いところで遭難しても、救助に迎えます。
また、小笠原諸島のように、飛行場がない島嶼部でも、救助や急患搬送に活躍できます。
海上自衛隊は7機体制で、US-1AとUS-2を装備しています。この3月に5機目のUS-2が納入されました。
世界中ではロシアのBe200、カナダのCL-415などの飛行艇がありますが、荒海に着水できるのはUS-2だけです。
我が国が世界に誇れるものです。ところが難点があります。値段が高いのです。なぜかというと、7機しか装備予定がないため一機あたりの単価が高くなってしまうのです。製造機数が増えれば単価は下がります。
この飛行艇を買いたいという国はたくさんあります。特にインドネシア、フィリッピンなど島嶼部の多い東南アジア諸国では需要があります。しかしながら「武器輸出三原則」によって輸出出来ないのです。人を救うための装備品が、武器でしょうか。
いまは「武器輸出三原則」も見直されています。ぜひUS-2が世界中の遭難者救助に役立つようがんばりたいものです。
ここで、笑い話を一つ。救難飛行艇US-2や輸送機C-1、C-130、開発中の輸送機C-2など遠距離を長時間飛行する機体はトイレを装備しています。US-1,US-2などは、客室の前部に大便器、後部に小便器を搭載しています。
ある時お医者さんを乗せる機会がありました。そのお医者さんが「トイレに行きたい」と申し出られました。搭乗員は前の方に案内するか、後ろの方に案内するか分らないので「大ですか? 小ですか?」と質問しました。そうしたら、件のお医者さんは、股間を眺めながら恥ずかしそうに「並です」と言ったそうです。搭乗員がどちらに案内したかは定かではありません。
近日中に飛行艇の動画を用意します。乞うご期待。→「救難飛行艇の活動状況」