中国の南シナ海支配が最終段階に入ってきた

6月21日、中国が南シナ海の南沙・西沙・中沙諸島を合わせて「三沙市」として新たに行政組織を作り、海南省の下に置くことを発表した。(中国国務院発表)
中国政府は、西沙諸島の永興島に市政府を設立し、7月23日には市長と市議を選出し南シナ海一帯の行政機構の整備に乗り出した。
7月19日に共産党中央軍事委員会が、新たに作られた「三沙市」に「三沙警備区」の設置を決定し、南シナ海の防衛体制を強化する姿勢を示している。
南沙諸島・西沙諸島はベトナム・フィリピンとの間で領土権の係争中であり、中沙諸島のスカロボー礁をめぐってはフィリピンとの間に対立が続いている最中であり、7月12日にはアセアン地域フォーラム(ARF)が開かれて、アメリカも参加し領有権争いの平和的な解決を目指した話し合いをしたばかりだった。
中国の領有権問題の対応は深謀遠慮で、ジワジワと長い時間をかけて進めるが、愈々となったときには一気呵成に進めてくる。この手法をよく見ておかないと、わが国も対応を誤ることになる。
これからは米中の確執が先鋭化すると思われるが、中国としてはそのことも織り込み済みだろう。
アメリカ経済の対中依存度はきわめて高く、アメリカの財政赤字は約1兆ドルといわれるが、中国は1兆ドルを超える世界最大の対米債権国になっている。
アメリカがそれほど器用に動けない事を見ているのかもしれない。
いづれにしても、中国の南シナ海領有支配は最終段階に入ったと判断しておくべきだろう。(松島悠佐)