我が国内の防衛議論、ウクライナの情勢について

今後「田母神セブン」掲載予定の記事を先行掲載します。

◆ 防衛力、特に継戦能力は「国家の個人情報」である

我が国の防衛政策、予算案について国会の予算委員会で審議されている。野党議員が当面の反撃能力に必要な「トマホークをいくつ調達するのか」という趣旨の質問をしている。マスコミも国民の知る権利について政府は説明すべき、という報道姿勢である。
民主主義国家の、ある意味、弱点でもあるが、国家防衛にかかわる予算の内訳を公開する必要があり、その趣旨、額などを議論し国会議員を通して国民の理解と支持を得る必要がある。
一方、我が国では個人情報の取扱いに極めてうるさい。個人の財産が、「どのくらいあるのか、証券か、現金か、金塊・宝石の類か」、「金庫に入っているのか銀行に預けているのか」、「それらは何時どのように使うつもりか」。こんなことを聞くものはあるまい。
国家も、国民の安全を守るために公開しない、してはいけないことがある。当然である。防衛力は国民の財産である。
国民の生命財産を守るために必要な、まさに「国家の個人情報」である。

◆ 与野党国会議員は直ちにウクライナに行き実情を把握するべきである

G7各国の首脳がウクライナを訪問している。岸田総理をはじめ政府要人はウクライナを訪問していない。ウクライナでは我が国の隣国であるロシアの侵攻を受けて悲惨な状況が続いている。何の罪もない国民が殺され、ひどい苦難に遭っている。
政府要人のみならず与野党国会議員は戦争の実態を身をもって確かめる必要があるのではないか。
「専守防衛」がいかに国民の犠牲を伴うことか、国民避難の実態など国家の指導層として、戦争状態の国家運営について学ぶべきではなかろうか。
激戦地バフムトでボランティア活動をしていた日本人が「もはや国家間の戦争ではなく、ウクライナの正義とロシアの悪の戦いである」と言い切っている。ロシア軍、特にのワグネルのふるまいは正に「蛮行」であり、一般の市民、特に女性や子供に対する行いは口にするのもはばかるものであるとのことである。今回の状況を見るに、シリア内戦、世界各地での紛争においても同様の蛮行を重ねてきたことが容易に想像できる。しかし,戦場ではこのようなこともまかり通ってしまうのである。
デヴィ夫人がウクライナを訪問したことが報じられている。御年○○歳、夫人の勇気、行動力には敬意を表するばかりである。
このままでは日本人は勇気がないのか、所詮自分に関わりが薄いと思っているのかと思われても仕方がない。岸田総理が広島で原爆被害の惨状をぜひ見てほしいと言っても説得力が少なくなってしまう。
現在のウクライナを訪問すればすぐに身につまされることがある。戦場下でわが身を守る術をどうするか。相手がいくら理不尽であろうと、実力には実力で対抗するしかない。
安全なところに身を置いて「平和」「戦争反対」を論ずることが、いかに無意味かを知ることになる。

◆ 守るべきは「法」か「人間としての正義」か、マスコミの「中立姿勢」は正しいか

最近、ウクライナが対人地雷を使用したと報道している。条約違反を咎める姿勢である。一方、ロシアは条約に加盟していないので、縦横無尽に使用しているが、このことにはあまり触れない。約束していないので、約束違反ではない。昨年始まったウクライナへのロシアの侵攻であるが、当初市街地が爆撃される映像を見ていると、多数の小さな爆発が起こっているのがかなり報道されていた。これはクラスター爆弾であろうと思われる。クラスター爆弾の使用も禁止条約にロシアは加わっていない。ウクライナがクラスター爆弾を使用することはないがロシアの行動はあまり非難されない。
日本人は、法や約束そのものよりも、違反することが不正義であると考える傾向にある。天下の悪法といわれる「生類憐みの令」でさえ、制定者の代替わりまで改められなかった。
今、「人道」ということが重要視される。しかしながら戦争は本来、非人道的である。非人道的な戦争においても、最低限のことは守ろうという人類の知恵の積み重なりで今日に至っている。
非戦闘員(一般市民)を目標とした攻撃、占領地での占領政策、一般住民・捕虜等の扱い、大量破壊兵器(核、化学、生物)の使用などについての決め事である。この最低限のことさえ守っていない、または脅しに使っているのが現在のロシアである。
我が国のマスコミ・報道は、ウクライナ、ロシアを戦争当事国として、双方の主張をそのままの形で同じ扱いをしている。情報戦の渦中であるとの注釈があるので、双方とも正しいとは限らないという印象を与える。
2月3日に報道されたロシアのプーチン大統領ヴォルゴグラードでの演説も「ナチとの戦争」を例に挙げて、ウクライナを非難している。他国の領土に攻め込み、非道の限りを尽くしているのはロシアである。
マスコミは「正義」の立場に立って報道すべきではないか。今や中立は「悪」に加担する行為である。

(防衛システム研究所事務局)