軍隊の雑装備
軍隊の装備は戦闘機や軍艦や戦車・ミサイルばかりではなく色々な雑装備もある。
装備にはそれぞれ種目もあれば名前もあるので、雑装備という呼び方は適当ではないとは思うが、主要な戦闘装備以外の周辺装備のことである。
昔、ソ連が主要な脅威だった頃、ソ連軍の装備品リストを丹念に調べいると、「パン焼器」が載っていた。自衛隊にも炊飯器があるのだから当たり前なのだが、「どんなパンを焼くのかな?」と想像してみた。
ドイツに留学した時、3・4日連続の状況下で演習に参加したことがあったが、もちろん食事の時間などはなく、補給点でパンとソーセージを受領して、そのまま戦闘行動が続き、暇を見てはそれをかじりながら任務を続行する状態だった。
「握り飯」だと冬は硬くなるし、夏は臭くなるし、管理が大変だが、その点パンは楽だなと思った。
パンをかじりながら戦闘訓練を続けるドイツ兵を見て、ソ連兵もこんなパンをかじって戦争するのだろうと想像し、このようなワイルドな人種はあまり相手にしたくない連中だと思っていた。
イタリア軍のキャンプに立ち寄ったら、炊事車でマカロニを茹でていた。なんとも食文化は面白いなと思いながら、こんなことをしているからイタリア軍はあまり強くなかったのかなと思ったりした。
軍隊に傘は不要なのだが、陸上自衛隊は装備している。人員用ではなく、野外で地図や精密な図面を作る時に雨よけに使うものである。
陸上自衛隊には昭和30年代末ごろまで警備犬がいた。なんと補給課(需品課)物品だった。北海道の広い弾薬庫警備についた時、警備犬と一緒に勤務した。よく働くが狐や野うさぎに過剰反応することも多かった。
食事時になると、われわれは鮭一切れのおかずだが、警備犬には肉の煮つけがたっぷりあって、人間より贅沢な感じがした。今では自動警報装置などが装備されて陸自には警備犬はいなくなったが、海自にはまだいるようだ。
補給課(需品課)物品というのは戦闘服や鉄帽(ヘルメット)・靴・シャツ・靴下・手袋まで何でもあるがパンツと運動靴だけはない。なぜだろうかと思いながら、答えを見つけないうちに退官した。今でも無いのだろう。
軍隊は完全な自給自足をモットーとしているので、戦闘行動のほか移動・行進・宿営・衣食住などすべてを賄えるようになっている。
周辺装備・雑装備には実に雑貨なものが多く、しかもこれがないと戦争ができない。
軍隊とは厄介な組織である。(松島悠佐)