陸・海・空各自衛隊の違ったところシリーズ (1)

陸上自衛隊、海上自衛隊、航空自衛隊はそれぞれの生い立ち、任務内容、組織等々によって、異なった特徴、性向・性格を持っています。
これらを評した最も有名なのが「朝雲新聞」の次の評価でしょう。良い点と、悪い点を述べていて妙だと思います。
陸上自衛隊:用意周到・責任不在
海上自衛隊:一致団結・頑迷固陋(伝統墨守ともいう)
航空自衛隊:積極果敢・支離滅裂

私は大学で、この特徴を説明したら、学生が「陸上自衛隊が『責任不在』ということは知りませんでした。」と書いてきたので、次の授業で、それは特徴的なことを強調しているので、何も無責任だという意味ではない。かえって用意が周到だけに、どこに責任があるのかが明確ではないという意味ぐらいにとってほしいと説明したことを覚えています。
(早速、陸上自衛隊のOBから異論がありまして「責任不在」 は「動脈硬化」に訂正します。)
陸上自衛隊:用意周到・動脈硬化
海上自衛隊:一致団結・頑迷固陋(伝統墨守ともいう)
航空自衛隊:積極果敢・支離滅裂

とにかく陸上自衛隊は人数が多いので、人的パワーがあります。私が一番「用意周到」を感じるのは、研究本部(朝霞)の存在です。陸上幕僚監部(陸幕)では、今日、明日の業務で手一杯です。
そこで、数年を見通した長期的視点に立って「研究本部」(研本)が、戦略、戦術、装備品まで統括して検討するのです。海上自衛隊(海自)、航空自衛隊(空自)にはこの組織はなく、それぞれ幹部学校が、戦略、戦術に関するものについては、そのような任務を負っていますが、装備品については海幕、空幕と技術研究本部が担当します。

海自の「一致団結」は元々船乗りの精神から発したものでしょうが、航空機も一人乗りのものはなく乗組員(クル―)のチームワークが大切なところからも言えます。「頑迷固陋」は古いことにこだわるという意味ですが、今でも、旧海軍の伝統を堅く守っている部分が多々あります。「例えば5分前の精神」です。
元々、「5分前の精神」は昔の船では、口頭、または伝声管等で艦長の意思を乗組員に伝えたのですが、艦長から末端の乗組員に意思が伝わるのに約5分かかるため、5分前に「予令」として発したものだということです。現在は電子機器の発達により、瞬時に意思通達ができますが、5分前の精神は今でも徹底しています。幹部候補生学校の「総員起こし5分前」などは最も迷惑ではないでしょうか。

因みに空自ではありません。いきなり起床ラッパです。ラッパが鳴れば、真冬でも上半身裸で、グラウンドに飛び出し点呼を受けます。
ただし、普段の生活で「5分前」の精神で取り組むことは非常に有効だと思います。
空自の「積極果敢」は航空機といういわば飛び道具を扱うところから必然的に「何でもいいから早くやれ」というところに由来すると思います。しかしその一方、あまり考えないで飛び出してしまうので「支離滅裂」になるのでしょう。
ただし、防空戦闘では、スクランブルで「何でもいいから早く飛び出した」パイロットを管制官が適切に誘導するようシステムとして整備しています。
敵対勢力も航空機の場合、速度が速いため、少しでも遠くで会敵するためには「速さ」が求められます。
「積極果敢」と「支離滅裂」を一緒にすれば「拙速」ということになると思いますが、一般社会生活においても「拙速は巧遅に勝る」ということで、決して悪いことではないと思っています。
(私は航空自衛官の視点で書いていますので、異論のある方は意見欄に投稿してください)