憲法改正論議

「憲法改正論議」

5月3日の憲法記念日になると毎年のことだが憲法改正の議論が少し熱くなる。
今年は安倍総理が具体的な考えを提示したので少し進むのかと期待している。
私は陸上自衛官だったので、非常事態の既定の無い現行憲法では対応が難しいことが多くて、早く改正して欲しいと思っていた。特に有事法制が不備だったので防衛計画を作っても実行が伴わず机上の空論になることが多かったことを憶えている。
例えば戦闘準備を整えても平時の火薬取締法の既定があるため、弾薬の移動や集積も十分に出来ない状態だった。結局イザとなったら何とかなるだろうと思って諦めてしまうしかなかった。
平成15・16年、小泉・安倍総理の時に有事法制が作られたが、現行憲法のもとでは十分なものにはならなかった。例えば武力攻撃事態が起きても、国民は現行憲法で保障されている基本的人権に支障の無い範囲で政府の非常措置に協力するとなっている。
国家の非常事態に対する認識はこの程度のものであり、これでは非常事態の対応など出来ないだろう。
国家の非常事態では万難を排してこれに対処する国家的措置が最優先されなければならないのではないだろうか。公のために私権が制限され、時に不公平も我慢せざるを得ない。ここに平時の法制では処置できない有事の法制が求められる理由がある。
現行憲法は平和国家を宣言していれば戦争は起きないのだという観念論が中心になっており、国家防衛という言葉はどこにもない。勿論自衛隊の事も書いていない。
国家防衛が法律に出てくるのは『自衛隊法』や『防衛省設置法』であり、したがって多くの国民が国家の防衛は自衛隊がやることだと思っている。国家の防衛は国民の義務であることが忘れられている。

今年こそは枝葉末節な議論を止めて、国家観に根ざした本質的な議論をして欲しい。(松島悠佐、2017.5.12)