ソマリア沖・アデン湾における海賊対処活動の体験談

ソマリア沖・アデン湾における海賊対処活動の体験談が8月17日千葉市で開催された。
主催は「千葉県自衛隊協力会連合会(会長:森田健作知事)」で、今回が3回目の企画となる。
千葉県には陸・海・空自衛隊の基地があり、その活躍を広く県民に伝えることが目的で開催されたものであり、「防衛システム研究所」も協賛団体の一つになっているので、参加させてもらった。
講演したのは先月までジプチ、アデン湾で任務についていた海上・航空・陸上の現職自衛隊である。
評論家の話と違って実体感と緊迫感があり3時間があっという間に過ぎてしまった。

海賊対処についての自衛隊の活動実績は防衛白書を参照すれば次のとおりである。
「現在派遣されている2隻の護衛艦は、アデン湾を往復しながら民間船舶を護衛している。
護衛方法としては、まずアデン湾の東西に一か所ずつ定められた集合地点において護衛の対象となる民間船舶の受け入れ作業を行う。アデン湾を護衛船団が航行する際には、船団の前後を護衛艦が守り護衛艦に搭載された哨戒ヘリコプターも、上空から船団の周囲を監視している。このように昼夜を問わず船団の安全確保に万全を期しつつ、アデン湾約900kmを2日ほどかけて通過していく。また、護衛艦には8名の海上保安官が同乗し、必要に応じて、司法警察活動ができるよう、自衛隊は海上保安庁と協力して活動している。13(同25)年4月30日現在で、3,068隻が、護衛艦に守られて、1隻も海賊の被害をこうむることなく、安全にアデン湾を通過している。わが国の経済のみならず、世界経済にとっての大動脈たる本海域において、自衛隊の行う護衛活動が生み出した安心感は大きい。
なお、風浪が小さく海賊の活動海域が拡大する非モンスーン期(3月~5月、9月~11月)においては、護衛航路を東方へ約200km延長して護衛活動を行っている。」
「ジブチ共和国に活動拠点を置く哨戒機(P-3C)も、日本の面積に匹敵するほど広大なアデン湾を、優れた航続力を発揮して警戒監視を行っている。ジブチを飛び立ったP-3Cは、アデン湾を航行する無数の船舶の中に、不審な船舶がいないかどうか確認作業を行っている。同時に、護衛活動に従事する護衛艦や他国の艦艇、そして周囲を航行する民間船舶に対し情報提供を行い、また、求めがあればただちに周囲が安全かどうか確認するなどの対応をとっている。2機のP-3Cを派遣している自衛隊は、同様に哨戒機を派遣している各国と協調しつつ、ほぼ連日にわたり警戒監視活動を行っている。
自衛隊のP-3Cが収集した情報は、常時、海賊対処に従事する米国などの各国派遣部隊や関係機関と共有され、海賊行為の抑止や、海賊船と疑われる船舶の武装解除といった成果に大きく寄与している。
09(同21)年6月に任務を開始して以来、13(同25)年4月30日現在で飛行回数は887回を数え、のべ飛行時間は約6,880時間に及んでいる。識別作業を行った船舶は約7万100隻であり、周囲を航行する船舶や、海賊対処に取り組む諸外国に情報の提供を行った回数は約7,700回となっている。
また、本海賊対処行動にあたっては、陸上自衛官が活動拠点におけるP-3Cやその他の装備品の警護を行っているほか、航空隊の司令部要員などとしても活動しており、自衛隊として初めての統合部隊が編成されている。このほか、空自も、本活動を支援するため、輸送機(C-130H)や多用途支援機(U-4)からなる空輸隊を編成している。」

酷暑の中で、不慣れな場所で、長期間故郷を離れ、家族と離れて任務を完遂してきたことに敬意を表するのは勿論だが、艦艇に乗っていた隊員も、航空機やヘリに乗っていた隊員も、警備に当たっていた隊員も、日本人としての誇りを持って任務を果たし、日本は良い国だと実感したことを語っていた。その顔は皆耀いていた。
最後のまとめは、統合幕僚副長の磯部陸将が担当したが、「帰国直後に公式に報告を受ける内容よりはるかに充実したものだった」と評していた。
会場700席はほぼ満員で盛況だった。企画した「千葉県自衛隊協力会連合会」の諸兄に感謝申し上げる。(松島悠佐)